わかれあげまん
ドキドキといやな感じに騒ぐ心臓をギュッと押さえながら、柚はとうとうヴィジュアルデザイン棟の入口ホールに来た。
渡良瀬とはほんの二日前、あんな酷い別れ方をしたままだ。
もっともその要因を作ったのは美也子なのだが。
美也子の言うように狭い大学でもあり、しかも同じサークルの先輩後輩という関係である以上、今後どう足掻いても渡良瀬と接触せざるを得ないことも柚には分かっていたのだが。
それでも小心者の柚にとってはまた彼と顔を付き合わせることは相当な脅威なのだ。
どうか先輩に会いませんように…
祈るようにギュッと目を瞑り息を吸い込んで、柚はVD棟の扉を押し開け入った。
「…!!」
入口扉の取っ手に右手を掛けたまま、柚はフリーズした。
なぜなら目の前に、どんぐり眼でこっちを見ている長身の渡良瀬が立っていたから。
神様はあたしに何の恨みがあるんだろ…
冷静な思考力までも凍り付きそうな限界ギリギリの脳内で、柚はかすかにそう思った。