わかれあげまん
「柚。…」
「あ;…の」
凝り固まった頭の中とは裏腹に、ドクドクと警告を発するように鳴り響く心臓。
とにかく一刻も早くここを離れたかった。
「さ、さよなら!」
震える声でどうにか言って、柚は渡良瀬の横をすり抜け奥へと走った。
「ちょっ…待てよ!」
慌てる渡良瀬の声が追いかけてきたが、柚は猛ダッシュで廊下を駆け、最奥のVD1のプレートのドアをノックもせず乱暴に開いて飛び込んだ。
はあ、はあ、と肩で息をしたままどんぐり眼で佇んでいる柚に注がれる、同じような8つの瞳。
「…おあ!?」
VD部屋の一人の一回生の男子学生が、頓狂な声を上げた。
「…え。…ほしざき、さん!?」
狼狽に柚は見開いたままの目を激しく泳がせ、そして最終的には真ん中の応接ソファにこちらを向き座っている哉汰にようやく定着させた。
無論、その哉汰もぎょっと目を見開いたまま、いきなり飛び込んできた彼女を見返し固まっていた。