わかれあげまん


「…あっ…す、すいませ…藤宮くん、これ…」


柚は青白い顔にひきつった笑みを浮かべ、ととっと応接テーブルへ駆け寄ると、哉汰にシャツの入った紙袋を手渡した。


まだ少し茫然どしたまま柚を見上げていた哉汰だったが、紙袋の中身に視線を向け、ああ、と呟いた。


何その袋。的に、周りにいる同じVD部屋の男たちは、意味深な笑みを口元に浮かべ探るように哉汰を見てくる。


そんな輩たちの目前であることもあってか、


「…わざわざすいませんね」


と昨日までの“タメ”な口の聞き方とは明らかに違う、目上の者への言葉遣いで哉汰は柚にそう告げた。


その時。


ココン、と軽いノックのあと、再びVD1部屋の扉が開かれ、柚を除いた一同は再び一斉にそっちを振り仰いだ。


「ちょ、ごめん…今ここ、柚が入ってこなかっ…」


柚の後を追い来た渡良瀬が自分に背を向けソファの前に佇む彼女の背中を見つけ、



「…お!やっぱいた~!ゆ~ずちゃん。」


と若干猫なで声で呼びかけた。



哉汰は渡良瀬から柚へと視線を戻し、目を細めた。


柚はまるで狼に見つかった子山羊よろしく蒼白な顔をひきつらせ、固まっていた。


更によく見れば小刻みに身体を震わせている。





…この人、渡良瀬さんに怯えてんのか?










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