わかれあげまん

少しの間黙ったまま、まだ昼前の国道をあてどもなく車を走らせながら、哉汰は隣の柚を見た。


柚はまるで弱りきった小動物のように小さく身をこごめ目を閉じていた。



このまま冬眠させてほしいとでも言うように小さく丸まったまま、窓側へ体重を預けている。



無理もない。

あの渡良瀬さんの毒牙にかかれば、こうもなるよな。




哉汰は『わかれあげまん』という枷を強いられた柚に少なからず哀れみを覚えた。



少しあって。


「…あの。」


とか細い声で柚が哉汰に呼びかけてきた。


「藤宮くん…さっき、あたしが先輩に何言われてたか、想像つくって言いましたよね。」


「…ああ。」


「知ってるんですか?…渡良瀬先輩と、あたしが、どういう…」


言葉尻の方は苦しげに細まって途切れたが、柚が哉汰に何を聞いてきたかは明確だった。


「…知ってる。」


前を見据えてドライブを続けながら、哉汰は涼しく答えた。


「やっぱし。…最、悪…」


震える声で言い、柚は激情で真っ赤になったまま頭を抱えてしまった。


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