わかれあげまん
「…自分で触れ回ってたらしいぜ。あの人。」
「えっ!?」
柚は真っ赤に染まったままの顔でまた愕然と哉汰を見た。
「…あんたのおかげで合格できたって。」
「最低、…最悪…!!」
柚はわなわな声を震わせて渡良瀬に悪態をついた。
「わかってる…男の子なんてみんなそう。そういう目でしか、あたしを見てないって。…もうホントやだ。…消えちゃいたいよ。」
「…ふーん。そう思う?」
「…だってほんとにそうなんだもん。あたしに近づく男の子はみんな」
「俺もその男ですけど?」
柚の方へ目も向けず、静かに涼やかに、哉汰が返した。
「…え。」
「しかも今、あんたに近づいてる。」
じっと見上げた哉汰の精悍な横顔はどこか謎めいていて柚はどきりとした。
それでもやはりここ数日渡良瀬によって散々な目に遭わされた柚には、卑屈で自虐的なマイナスオーラが分厚く垂れ込めていた。
「…そ、そう!そうだよ、藤宮くん。あたしになんて近づいちゃだめ!それとも助け舟とかっていい人ぶって、それってやっぱりあたしに取り入りたいから?」