キミがいた夏~最後の約束~




「どうしよう…」


こんな顔じゃあ学校に行けない


これじゃあ『ぶつけた』では通らない


私は自分の口元を手で押さえながら、ただ呆然と鏡の前で立ち尽くしていると



ガチャガチャ━━…



玄関の扉を開けようとしている音がした


カギは掛かっていない筈なのに、何度も何度もドアノブをガチャガチャと回す音だけが静かな家に奇妙に響いた




お父さん?




素直に入ってこないところを見ると、また酔っているのか



ガチャガチャ━━…



再び聞こえたその音に
私は言い知れぬ恐怖に襲われた




『逃げなければ』




そんな衝動にかられ、洗面所から廊下へ勢いよく飛び出す


玄関からはダメだ
そう思った時、玄関の扉がゆっくりと開く



ガチャン!

ギィ━━━━━……‥‥



私は裏の勝手口から走って外に飛び出していた



逃げなければ


逃げなければ


でもどこへ?


そんなことは考えられない


ただ逃げなければ


私は何も考えずに走っていた


咄嗟に取った本能的な行動だった





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