キミがいた夏~最後の約束~
「あんたこいつの親父だろ?」
橘先輩が静かに話し始める
「実の父親だろ?」
表情は見えないけれどひどく悲しそうな声
「なんで自分の娘、殴ったりすんだよ?」
お父さんはその質問に何も答えることなく静かに聞いていた
「あんたが苦しんだのはわかるよ…でも…」
そこでいったん言葉を切った橘先輩は、私を悲しげに一瞥すると
再び感情が爆発したように語気を荒げた
「なんで娘が苦しんでるのがわかんないんだよ!!」
廃墟のような家の中で橘先輩の悲しい声だけが木霊する
「同じように苦しんでるのに、こいつはあんたを庇うんだ!!
あんたが苦しそうで辛いって泣くんだ!!
………………あんたが…本当は優しい人だからって…」
お父さんはその言葉を聞いてハッとしたような顔をした
私は橘先輩が私のためにこんなに怒ってくれていることが、不謹慎だけどとても嬉しかった
「あんたがいらないなら俺が貰うから」
そい言って橘先輩は私を振り替える
私を見つめるその顔はとても優しい
「俺がずっと大切にする」
そういって橘先輩は私を大事そうに抱き上げてくれた
お父さんは何も言わなかった
ただ静かに俯いていた
その背中は少し震えているように見えた