新撰組のヒミツ 壱
「……私は暗殺ばかりだよな」
山崎は諜報、光は暗殺と指南。この頃は土方によって、はっきりとそのような境界線が出来てきたのだった。
げんなりとした顔でうなだれる光は、おもむろに太刀を腰から外すと、鯉口を切って刀身を露わにし、手入れをし始める。
着替えようとする山崎に背中を向けて座ると、拭いきれなかった血脂で曇る刃を丁寧に磨いていく。その間も会話は続いた。
「隊士やりたいん?」
「……そう言われると嫌かな。稽古が殆ど無い分、監察の方が楽な気もする。まあ、私は指南があるから変わらないんだけど……」
「監察はな、勿論大変やけど……変装とか楽しいで、割と。特に女に変装して口説かれたときなんざ傑作や」
背後で聞こえる声が震えた。きっと肩を小刻みに揺らして笑い、過去のことでも思い返しているのだろう、と光は冷静に考えていた。
「それはそれは……悪趣味だな」
「人聞きの悪いこと言わんといて」
山崎の口調が拗ねたようなものになる。
「事実だからしょうがないだろ」
無論、光はそれを訂正するつもりはない。
潜入先での立ち回りが上手く、敵を作らない性分であり、幅広い分野に秀でている山崎は、幹部たちから絶大な信頼を得ている。
そんな山崎の意外と知られていないことは、人をからかい、面白がるようなところがあるように思う。
それはこの頃分かったことだった。任務中は至極真面目で一切手を抜かないが、非番のときにはそんな発言をしたりする。
山崎は諜報、光は暗殺と指南。この頃は土方によって、はっきりとそのような境界線が出来てきたのだった。
げんなりとした顔でうなだれる光は、おもむろに太刀を腰から外すと、鯉口を切って刀身を露わにし、手入れをし始める。
着替えようとする山崎に背中を向けて座ると、拭いきれなかった血脂で曇る刃を丁寧に磨いていく。その間も会話は続いた。
「隊士やりたいん?」
「……そう言われると嫌かな。稽古が殆ど無い分、監察の方が楽な気もする。まあ、私は指南があるから変わらないんだけど……」
「監察はな、勿論大変やけど……変装とか楽しいで、割と。特に女に変装して口説かれたときなんざ傑作や」
背後で聞こえる声が震えた。きっと肩を小刻みに揺らして笑い、過去のことでも思い返しているのだろう、と光は冷静に考えていた。
「それはそれは……悪趣味だな」
「人聞きの悪いこと言わんといて」
山崎の口調が拗ねたようなものになる。
「事実だからしょうがないだろ」
無論、光はそれを訂正するつもりはない。
潜入先での立ち回りが上手く、敵を作らない性分であり、幅広い分野に秀でている山崎は、幹部たちから絶大な信頼を得ている。
そんな山崎の意外と知られていないことは、人をからかい、面白がるようなところがあるように思う。
それはこの頃分かったことだった。任務中は至極真面目で一切手を抜かないが、非番のときにはそんな発言をしたりする。