新撰組のヒミツ 壱
鏡のように白銀に輝く、手入れの終わった刀をじっと眺めると、やがて満足げに微笑み、床に置いていた鞘へと納めた。
そして、もう着替える衣擦れの音がしなくなった背後を振り返る。そのまま微笑みを浮かべている口元のまま、着替えが終わった山崎を見上げた。
「ねえ、烝」
「ん?」
「何でこの世界に来たのかじゃなくて、何で最初からこの世界に生まれなかったんだろう……って考え始めたんだ。
――まあ、ね。失ったのは大きいけど」
親兄弟も、友人も。
人道を守ることさえも、既に失った。
だが、最早帰りたいとすら思わない。
この組を見届けたいのだ。平和を手に入れた代償に冷えてしまった未来を捨て、熱い想いが渦を巻く過去の手を取った。
大切な師を失い、
進むべき道を見誤り、
そして、大切なものを見つけ出した。
それに正誤などない、ただ井岡光という一個人の選んだ道であるというだけだ。
「私自身はこの時代に来れて良かったと思う。本当に大切な仲間が出来たから。
色々……あったし、これからも沢山嫌なことがあると思うけど。“毎日を生きてる”って感じがするよ」
唐突に口をついて出たその言葉。この想いを他の誰でもない山崎へとどうしても伝えたいと思ったことだった。
光の言葉に対し、山崎は驚いたように目を見張った。次第にその目は、愛嬌の感じられる至極優しげなものへと変わる。
「――せやな。お前が居る世界がええ」
貴方が私を守ってくれたように。
貴方を守りたい。
そう強く願った。
【弐へ続く】
そして、もう着替える衣擦れの音がしなくなった背後を振り返る。そのまま微笑みを浮かべている口元のまま、着替えが終わった山崎を見上げた。
「ねえ、烝」
「ん?」
「何でこの世界に来たのかじゃなくて、何で最初からこの世界に生まれなかったんだろう……って考え始めたんだ。
――まあ、ね。失ったのは大きいけど」
親兄弟も、友人も。
人道を守ることさえも、既に失った。
だが、最早帰りたいとすら思わない。
この組を見届けたいのだ。平和を手に入れた代償に冷えてしまった未来を捨て、熱い想いが渦を巻く過去の手を取った。
大切な師を失い、
進むべき道を見誤り、
そして、大切なものを見つけ出した。
それに正誤などない、ただ井岡光という一個人の選んだ道であるというだけだ。
「私自身はこの時代に来れて良かったと思う。本当に大切な仲間が出来たから。
色々……あったし、これからも沢山嫌なことがあると思うけど。“毎日を生きてる”って感じがするよ」
唐突に口をついて出たその言葉。この想いを他の誰でもない山崎へとどうしても伝えたいと思ったことだった。
光の言葉に対し、山崎は驚いたように目を見張った。次第にその目は、愛嬌の感じられる至極優しげなものへと変わる。
「――せやな。お前が居る世界がええ」
貴方が私を守ってくれたように。
貴方を守りたい。
そう強く願った。
【弐へ続く】


