魔界動乱期
「それでじゃな、ラウド」

「な、何でしょうか?」

ギルシャスがニヤニヤしながら言葉を切り出した。
その顔付きを見たラウドは、少しずつ後ずさる。
ギルシャスがこういう顔をするときは、大抵悪戯めいた事を考えているからだ。

「軍団長というのは良い区切りじゃと思わんか?そこでお前さんはもうひとつ、臆病者の勇気を振り絞ってはみてはどうかと思うんじゃがな」

「もうひとつ勇気を?どういう事でしょう?」

「そろそろ家庭を持つべき、という事ざゃ。お前さんの答えを待ってる女がおるじゃろう?」

「う……、そ、それは……」

ラウドの頭の中一面にエレナの顔が浮かび上がる。
しかしその端から、さきほどの妖狐の顔もススッと入ってきた。

「ち、違う違う!私の心は一筋だ!」

自分でも予想だにしなかった対抗馬の出現に、ラウドは思わず声を上げた。

「なにしとるの……?」

「す、すみませんギルシャス様!こ、この事は……帰って考えます!!」

ラウドは混乱しながら、王の間をそそくさと出ていった。

「あいつ……、こっち関係はからっきしですな」

「ホッホッホ、さて、ラウドはどんな答えを出すかのう」

「どんな……て、さすがにギルシャス様につつかれればラウドもプロポーズするでしょう。さきほどのギルシャス様の言葉は、エレナを嫁にやる、といういわば公認という事ですから」

「いやまあ、十中八九エレナじゃろうし、儂もそれを望んでおる。じゃが、数百年来の友魔として‘あやつ’の長い孤独を考えるとのう……」
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