ブラッディマリー
和は万里亜を連れて、中庭を歩いた。
春には咲き誇っていたであろう白い薔薇は、今は花をつけていない。子どもの頃、君子が泣いているのを見てはここに逃げ込んだことを思い出す。そして決まって、心配する西成に連れ戻されていた。
記憶をさらいながら、和はふとその中におかしなものがあることに気付いた。
急に中庭を見渡し、落ち着きをなくした和に、万里亜は手を伸ばす。
「……和? どうしたの?」
「いや……ここ、季節には薔薇が……白い薔薇が咲くんだけど、残ってないかと思って……」
「薔薇……」
薔薇と聞いた万里亜の眉根が、わずかに寄せられた。
「薔薇は苦手……」
和のシャツの袖を掴んだまま、万里亜は俯く。そのどこか沈んだ様子が気になって、和は万里亜を覗き込んだ。
「……万里亜? 俺、何か変なこと言ったか……?」
万里亜は和を見上げると、悲しげに頭を振る。
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