ブラッディマリー
 


「ううん。……薔薇が残ってないかって言ってたよね。淡く香りがするよ、こっち……」



 万里亜がワンピースを翻して足を進めたのは、日蔭のせいで目立たない場所の、小ぶりな薔薇の葉の前だった。軽く葉と細い茎をかき分けて覗き込むと、小さな白い薔薇の花がいくつかまだ咲いている。


 陽当たりが悪く、成長が遅かったのだろうか。



「お前、鼻いいのな」


「そんなんじゃないよ。ヴァンパイアだってバレないように用心深くなって、この香り覚えちゃっただけだから」


「用心深く?」



 万里亜を振り返りながら、和は無造作に花に手を伸ばした。



「和、待って!」



 万里亜が焦ったように声を上げたのと、和の指先に触れた薔薇がさっと枯葉色に染まり花弁が崩れたのとは、殆ど同時だった。



「!?」



 和は今目の端に入ったものが信じられず、その隣の蕾にまた触れる。同じように、まだ若い蕾も花弁が開くのを待たずに色褪せ、さらりと崩れた。

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