ブラッディマリー
 


「……ヴァンパイアはね」



 少し沈んだ声で、万里亜は口を開く。



「ヴァンパイアは、薔薇に触れないの。あっという間に萼(がく)の中の生気を吸い取って、花を枯らしてしまうから。それが何でなのかは判らないけど。だから人前では薔薇に近付かないよう、香りに敏感になるの」


「……そうなのか……それでだ」


「え?」



 和は薔薇から離れると、中庭を振り返った。



「昔、子どもの頃……ここで疲れて眠り込んでしまったことがあるんだ」



 和は万里亜について来るよう促すと、中庭の薔薇園の中心の整備された芝生を指差す。



「俺、あそこで寝転がった筈なんだ」



 続けて、一番陽のあたる薔薇の茂みを指し示した。



「なのに、探しに来た西成に起こされて目を覚ましたら、あの中に寝かされて──俺の周りの薔薇だけが枯れてた」


「……それって、どういうこと……?」


「俺、よくここに来て薔薇に触ってたけど、今まで枯れたことなんてなかった。だから……ここまで入って来れるヴァンパイアに運ばれたんじゃないかと思う」


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