ブラッディマリー
屋敷の最上階、4階の端の部屋──そこから、窓を開け放して尚美が立ち、じっと和を凝視していた。やせ細ったその顔と身体つきは、彼女を更に老けさせて見せた。昔、いつも綺麗に梳かしていた髪はつやを失って絡み、もつれてくしゃくしゃになっている。その割に窓枠にかけた指先だけが毒々しく朱く彩られ、落ち窪んだ目は爛々と異様な光を放っていた。
……多分、敬吾の不貞に気落ちしてこうなってしまっているのではない。
和はすっかり別人と化した尚美を見据えると、その汚れた瞳から守るように万里亜を自分の身体の影に隠した。
ふふ……と尚美が男に媚びる時によく漏らしていた含み笑いの声が聞こえた気がする。
踊るように尚美は部屋の中に消え、カーテンが閉められた。
開いたままの窓に靡く風に煽られ、陽あたりの悪い部屋に似つかわしくない極彩色の花柄が揺れていた。
「……面倒なヤツに見られた。万里亜、中へ戻ろう」
「う、うん……」
「見えたのか?」
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