ブラッディマリー
万里亜はこくり、と素直に頷いた。こいつはヴァンパイアのくせに無防備だな……と思い、和は苦笑する。
「今のが、親父の今の嫁さん。俺が昔オイタした相手だ」
「……。そういうの、気にならないって言ったら嘘になるけど……」
万里亜は微妙な表情を和に向けた。
「……何ていうか、そういうちっちゃい感情より……心配になっちゃった」
「そうか。そりゃよかった……って、え? 心配?」
万里亜は尚美の部屋からこちらが見えなくなるよう、早く歩きながら続ける。
「判らなかった? あの女(ひと)、死相が出てた……」
死相。
確かに年齢にそぐわない疲れ切った肌と老け方は、生気を失った人間のそれだ。和は言い得て妙だな、と思った。
さっきの尚美の視線の意味が判らないまま、和は万里亜を連れてドアを開けた。
と、そのドアにガチャンと大きな衝撃。一瞬後にびしゃり、と床に水が飛び散る音がした。
見ると、粉々になった陶器の花瓶だったものが散らばっている。
.