ブラッディマリー
その途中の一輪挿しを、また和に向かって投げつけた。
……一輪挿しがスローモーションで飛んで来るように見えて、和は一瞬ぼーっとした。
そして、一輪挿しが自分に届く前に割れればいい──そう、思った。
「和、ダメ!!」
万里亜の透明な声が今の混濁した意識を切り裂いて、和ははっと我にかえる。
ガシャンと音がして、一輪挿しは足元に落ちていた。
いつの間にかドアの隙間から屋敷の中に滑り込んだ万里亜が、持っていた日よけのパラソルを差して和の前に立っている。パラソルを差して一輪挿しを跳ね返したのだとようやく把握して、和は万里亜を見た。
万里亜は振り返りざま、肩をすくめる。
「“思ったら”……そうなっちゃうから……知らない人達の前ではダメだよ、和」
「……!? 何で、判った!?」
「空気で、判るものなの」
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