ブラッディマリー
 

 尚美をそんなふうに見たことはなかった。彼女も一人の女だったということを判っていたつもりで、たった今まで知らなかった自分に驚いたのだった。


 そう認めた瞬間、和はズタズタになった彼女に無関心でいることは出来なくなっていた。



 部屋へ逃げ込んだ尚美を追った和は、後ろ手にドアを閉めた。その瞬間、ドアに身体を押し付けられる。ふ……と甘ったるい香りがして、口唇を塞がれた。





「……!」





 尚美は全体重を和に預け、頭ひとつ分近く高い彼の口唇に、自分のそれを更に深く重ねる。一瞬目を見開いて驚いた和は、強張った身体から力を抜いた。


 尚美を受け入れるつもりも、受け止めるつもりもない。ただ、逃げることが出来なかった。

.
< 203 / 381 >

この作品をシェア

pagetop