ブラッディマリー
 

 掠れた声に、さっきの覇気はもうない。和はようやく尚美の肩をそっと抱いた。


 驚く程細い肩には深く重い孤独と後悔がのしかかって、彼女の人生そのものが擦り減ってしまっている気がする。



「親父が?」


「……あたし、一人っ子だったから……実家に養子に出してしまったの」


「何でそんなことに」


「あなたがいるから、もう子どもは必要ないんですって」



 言って、尚美は低く笑った。



 ……ああ、憎まれるわけだ。



 いきなり花瓶を投げ付けられた理由が判って、和は冷静に納得してしまった。


 やはり敬吾に直接確かめなければならないようだ。



 どうして俺にこだわるのか、と。



 和はとりあえず尚美が落ち着くのを待って、彼女の部屋を後にした。





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