ブラッディマリー
 


「和!」



 和が疲労を感じながら執務室のドアを開けると、万里亜は顔を見るなりソファーから立ち上がった。


 一瞬で明るくなったその顔に、やっぱり心配させてしまっていたのだと判った。


 そんな万里亜にそっと笑顔を返すと、和は彼女の隣に腰を下ろす。



「和様、大丈夫ですか?」



 奥から西成が現れ、済まなさそうに眉尻を下げた。



「大丈夫だよ。薬があったから飲ませて、寝かせて来た」


「さようでございますか……申し訳ありません」


「いや……」



 和は煙草を1本くわえながら、火を点けずにじっと一点を見つめる。



 尚美の産んだ子を、敬吾は彼女の実家に養子に出したと言っていた。自分は家を出ていたし、敬吾は連れ戻そうともしなかったのに……。


 敬吾が君子と離婚した時、親権と養育権を決して彼女に譲らなかったことは、和にも理解出来た。納得はしていなかったけれど。

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