ブラッディマリー
「……結婚もしとらんお前には判らんだろうな。そんな君子を大事にしようと、黒澤の正統な跡取りを産ませてやりたいと思った──よそ者の儂の捩れた欲望なぞ」
敬吾の言葉を聞いた和の目が、はっと見開かれる。
記憶の澱の底に沈んでいた言葉達が、光を目指して浮き上がる。
『……あの人にそうしろと言われて、私はそれを受け入れました』
『判ってる。俺もあなたを愛してるわけじゃない』
『後悔していますか?』
『いや、義務だと思ってるから……』
『……私は……悲しいですよ。……こんな形でないと叶わないなんて……』
『それでもあなたは俺のところに来た。判らないな。俺には』
『あなたも誰かを愛したら……きっと判りますよ』
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