ブラッディマリー
 




「……結婚もしとらんお前には判らんだろうな。そんな君子を大事にしようと、黒澤の正統な跡取りを産ませてやりたいと思った──よそ者の儂の捩れた欲望なぞ」





 敬吾の言葉を聞いた和の目が、はっと見開かれる。


 記憶の澱の底に沈んでいた言葉達が、光を目指して浮き上がる。






『……あの人にそうしろと言われて、私はそれを受け入れました』


『判ってる。俺もあなたを愛してるわけじゃない』


『後悔していますか?』


『いや、義務だと思ってるから……』


『……私は……悲しいですよ。……こんな形でないと叶わないなんて……』


『それでもあなたは俺のところに来た。判らないな。俺には』


『あなたも誰かを愛したら……きっと判りますよ』




.
< 221 / 381 >

この作品をシェア

pagetop