ブラッディマリー
ぴちゃ……と音がして、男は満足そうに溜め息をついた。
その腕の中の女は真っ青な顔をして、力の入らない身体をだらりと投げ出し、されるがままになっている。
瞳だけが辛うじて動いていたが、既に痩せ細り頬骨が突き出て、陰影の深くなったその表情は、死期の近い人間のそれだった。
自分では起き上がれず、ずるりと男の腕から崩れ落ち、床に倒れ込んだのは尚美。男は立ち上がると、赤く濡れた口唇をぺろりと嘗め取った。
「熟し切った果実の蕩けるような甘さは嫌いではないが……姦淫は大罪だ。それを犯した女の血は、やはり旨味に欠ける」
恨めしげに見上げる尚美を見下ろし、おかしそうにくく……と笑いを漏らしたのは、澄人。
開いたままの窓を彩るカーテンが、ひらひらと夜風に煽られ揺れていた。力が入らず震える尚美の指先が、澄人の足首を掴む。
「……何が、姦淫よ……あなただって、妹と……」
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