ブラッディマリー
 

 すると黙って聞いていた万里亜が、心配そうに和の腕に指を絡ませて来た。



「和……」


「……」



 止めるでもなく、咎めるでもなく見上げて来る万里亜の瞳に、和の中に巣くっていた痛みの塊が、ふと角をなくすように穏やかさを取り戻そうとする。


 けれど、訊かなければあれ程の覚悟をして自分を産んだ母が浮かばれない。


 また敬吾の顔に視線を戻すと、和はきゅ……と口唇を固く結んだ。すると敬吾は、重い口を開く。



「……儂はあれを、楽にしてやりたかっただけだ」


「何だって?」


「外の女は君子が表に出たがらなかった分、確かに儂自身にも必要なものだった。だがそれの存在を君子に悟らせ続けたのは、儂を憎ませる為だ」


「だから、何でわざわざそんなことを」


「……憎んで、怒ってさえいれば、あれが泣かずに済むと思った。結局、泣かせ通しだったがな……」


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