ブラッディマリー
 

 当たり前だろう、と詰りたいのを堪え、和はギュッと唇を噛み締める。



 母の、あの死に様を見ていないくせに、と。



「弱い女だということは、初めから判っていた。夫の不貞に耐え忍ぶことなど、到底できん女だと。だが、儂はあれを侮っていた。君子が耐えようとするなどとは、思わなかった。この家の為に、儂の為に──そして、何よりも和、お前の為に」


「俺の?」



 ああ……と頷いて、敬吾は枕元に置いていた手帳を手に取り、中から何かを取り出して和に差し出した。



「見てみろ」


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