ブラッディマリー
 

 読み進めるに従って、舌の根にジワリ……と苦いものが滲んでいくのが判った。


 気を抜けば震え出してしまいそうな指先でくしゃり、と手紙を握りしめる。


 眼球だけを動かして、和は敬吾の穏やかな顔を見つめた。



「……判って別れたのなら、なんで母さんは自分で死んだ……?」



 和のその問いに、敬吾は黙ってかぶりを振った。



「儂にも、判らんよ」


「判らないって、そんな」



 にわかに和の感情が波立ったその瞬間、万里亜の細く冷たい指先が縋るように身体の後ろから回される。



 その刹那、部屋の空気が冷たいものへと変わるのが判った。と同時に、和の呼吸がヒュッ、と止まる。


 腰の筋肉がぎゅっと締まり、身体中の神経がそこに集中する。



 呻くような声が自分の喉から漏れたのが判ったが、和の頭は必死にそれを否定していた。

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