ブラッディマリー
 


 最後の選択が和を捨てるものだったとしても、交わした気持ちの何もかもが嘘に姿を変えるわけではない。


 自分が万里亜を救いたいと思い、愛していると感じたことだけは、それが届かないものだったとしても、誰にも否定できない。当の、万里亜でさえ。



 浅い呼吸を繰り返す万里亜の口唇に、和は自分のそれをそっと重ねた。


 その瞬間、万里亜の瞳からまた涙がこぼれる。


 甘い血の味にぞくりとして、和はそのまま自分の口唇を軽く噛み切った。


 万里亜の身体がビクン、と反応する。



 最後まで喰い合うのがヴァンパイアの男と女。もう、それでいいよ。



 万里亜の罪の意識も汚れて壊れた心も、ここに──俺の中に、置いて行けばいい。



 和がそう囁くと、万里亜はどうしようもなく嬉しそうに微笑んだ。



 その瞬間、和も笑顔を返し──万里亜の胸を引き裂いて、とどめをさした。


 万里亜は、声ひとつ上げなかった。




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