ブラッディマリー
 


 万里亜の命が尽き、髪が白く染まったのを見届けながら、和は手に残った彼女の血を嘗めた。


 おそらく万里亜は、ヴァンパイアのそういう性分が嫌いだったのだろう。



 けれど和は、それを罪だとは思わなかった。



 好きな女のものなら、別に唾液だって血だって、何だっていいと思った。欲ではなく、愛おしんでそうしていることは、自分が一番よく判っている。


 そうして和は、最後の澄人の言葉の意味が判った。



『お前のように大事に育てられれば、あるいは何か変わったかも知れないが』



 大事に……ということが、この歳まで人間でいられたことを言っているのなら。


 澄人に、あるいは万里亜に妬まれても仕方がない。


 どうしたいかを選べるようになる程成長するより先に、目の前の血を啜らなければならなかった彼らに比べれば、自分のしていることを判っている自分は遙かに生きることそのものが楽なのだろう。



 初めから相容れぬ同士だったのかも知れない。


 愛さなければよかった、出会わなければよかったと。



 気持ちをどれだけ整理しても、それだけは思えなかった。




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