ブラッディマリー
和は墓に向かって手を合わせると、いつの間にか雨が止んでいることに気が付いた。
そういえば、雨の日の頭痛の癖はいつしか消えていた。薬も、随分と飲んでいない。
髪は元に戻ったし、こうして昼間から歩き回ることが出来るし、どこからどう見ても普通の人間だ。
ただ、中身だけが大きく変わってしまった。でも、誰もそんなこと気付きはしない。妖しく潜んだ、この牙の餌食にでもされない限り。
そういえば、開き直った尚美が自分の産んだ子に行ったDNA鑑定の結果を見て泣いていたことを思い出す。
間違いなく敬吾との子どもだったことが嬉しくて仕方なかったようだ。
和は別の意味でほっとした。
黒澤の家の歴史に埋もれて消える筈だった敬吾の血を引く者が、ちゃんといることに。
母の君子が生きていたら、私が産みたかったのに、と激しく泣いたのだろうと想像して、和は笑った。
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