ブラッディマリー
「え? 和、俺は敬吾がお前を大事に思っていたってことを……」
「あんたがあの狸親父から母さんをうまく貰い受けてれば、俺だってもう少し違う人生だったって言ってるんだよ!」
頭に血が上った勢いで、和は傘を俊輔に向かって突き出した。
ビニール傘の先端は、尖っている。和の力で俊輔の心臓に突き立ててやれば、あっという間に彼は灰になる。
ひぇっ、と声を上げて、俊輔は墓を囲む塀の上まで跳んだ。
「危ない、危ない。お前、親殺しに手を染めるつもりか」
「惚れた女をこの手で引き裂いた俺に、怖いものなんてないんだよ! あんたと同じで」
怒る和にしても本気でないことは判っているのか、俊輔は眉尻を下げて力なく笑った。
「……悪いと思ってるって。だから、家を出たお前がのたれ死なないように、ずっと見てた」
「頼んでないから」
「お前に何かあったら、君子が泣くから」
「……いいよな、あんたには俺がいて。でも俺には、何も残ってない」
「……」
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