ブラッディマリー
ふい、と拗ねた子どものように俊輔から顔を背けると、和は傘の先でアスファルトをこつん、と鳴らす。
どこか遠くを見るような瞳で、和は白い壁を見つめた。
「……だけど、俺、まだ万里亜がどこかにいる気がして仕方ない。棺にも入れたし、焼くところもずっと見てたし、骨も拾って、触ったのに。あの雨の夜の続きから、いつかやり直せる気がして、仕方ないんだ」
それきり押し黙った和を見下ろしながら、俊輔は静かに頷いた。
気のせいだとも、妄想だとも、俊輔は言わなかった。
最後に『お前と万里亜ちゃんなら、どうにかなるかもな』と呟いて、俊輔は塀の向こうへ身を躍らせた。
少し前まで、あり得ないと思っていた吸血鬼がこの世に存在していた。
しかも、それは自分のことで。
だったら、『ありえないこと』なんてないんじゃないかって思っただけだ。
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