十五の詩
──指輪のことが頭から離れない。
イレーネは鏡の前で髪をとかしていたが、肩の前でひとつに軽く束ねるとベッドの上に寝転んだ。
(指輪をあげたい人がいるようには見えなかったんだけど──)
ユニスの様子を思い起こしていた。
もし好きな女性にあげたい指輪なら、好きな女性のいないような場所では持ち歩かないだろうという想像ができたからである。
フェセーユは男子校だからだ。
イレーネがフェセーユに通っているのは特殊なケースで、剣術などの騎士になるために必須である科目が、普通の学校では受けられない。
女子の一般教育のカリキュラムにそれが組まれていない学校がほとんどだからである。
スフィルウィング家の令嬢という立場にあるイレーネは、いずれはアレクメス王家を支える人間になるか、スフィルウィング家当主として立つかのどちらかしかなかった。
イレーネは前者を選んだ。騎士として国王を支える立場になることを望んだのである。
フェセーユを選んだのは騎士の試験を受けられる条件を満たしている学校の中で、最も落ち着いた校風だったからだ。
神学生たちはイレーネの目には恋愛をしている暇はあるのだろうかという印象だった。
フェセーユに通いはじめてわかったことなのだが、イレーネ自身が身をもってハードなカリキュラムだということを痛感していたからだ。
(ユニスに好きな人──いるんだろうか)
イレーネにはそういう意味での‘好き’はよくわからない感情だった。
神童と言われているような人でも好きな人がいるのか、それが気になった。
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