十五の詩
妖華というのは‘人でなし’と言われている妖のことである。
人との共存共栄はあり得ないとも言われる、人にとってはふるくからの宿敵である人喰い──。
その姿形は多様で、人の姿を持つ者もあれば視覚的には姿を捉えられない者もある。
これまでの歴史でも、人と妖華は種族の優勢劣勢を争い多くの血が流されて来たのだが、ユニスが五歳になる年に世界が妖華によって大恐慌状態に陥るというまでに至った。
誰の目にも明らかな妖華の優勢──。
その時に妖華に関わり生き延びた人間は少ない。
しかしユニスは妖華に関わりがあったこと──否、関わらざるを得なかったことなのだろうか、それが宿命であるかのような表情でいる。
「まさか、お前の魔力か?」
狙われたのは。ユニスは首を縦に振った。
「──そうです」
魔力の高い者を喰らうと力が増す。
ヴィンセントの生まれた国であるアレクメスはそれほどでもないが、国によっては魔導士狩りなどが行われている国も未だある。
ユニスは飛び抜けて魔力が高く魔法学界での位も持っているとは聞いてはいたが、普段の物静かで優しげなユニスを見ている限りは、そのような血生臭いものと関係があるとは容易には想像つかなかった。
そういうことがあるところにはあるものなのだ。
力なき者は強い力を持つ者のそれを羨み、欲する。だが──。
(それを持つ者は持つがゆえの代償をも負っているということか)
持っていればいるだけその身は危険にさらされる。