十五の詩
「──私は人を愛してはならないのかと思うことがあります」
ユニスの声が震えた。
「…どういうことだ?」
「私の愛する人はそれがゆえに命を犠牲にしてしまったからです。父上も、母上も、その方も!」
いつのまにか感情的にユニスは叫んでいた。ヴィンセントは絶句する。
好きな人のみならず。
(両親も──…?)
かける言葉を探せなかった。自分の身近にいる人間が自分のために命を犠牲にしてしまう──そんなことが起こりうると考えたことはヴィンセントにはなかったからだ。
ユニスはヴィンセントの表情を見て、はっとしたように瞬時に表れた感情を隠した。
「──すみません」
「──」
ヴィンセントはユニスをどうしていいのかわからない気持ちで見つめた。
「それでお前は平気なのか?」
「──」
「俺はお前のように高い魔力は持たないからよくはわからないが、それでお前が負い目を感じるのは違うと思う」
ユニスは完全には納得していないようだったが、その言葉にほほえんだ。
「──ありがとう」
「大丈夫か?」
「はい。…少し風に当たってきます」
ユニスの目は窓の外の方に向けられていた。夕暮れ。空が紅色、橙色、蒼色のグラデーションに覆われている。
ヴィンセントは心配だったが、その空の色に首肯した。
*