美しいあの人

たとえ側にいなくても

松井さんと芙美子さんが、あたしに向かって頭を下げている。
あたしは途方にくれていた。
どうしろというのだ。

急にせんばづるへ呼び出されたと思ったら、
「祐治がいなくなった」と聞かされた。
どういうことだ。

何も言うことを思いつかなくて、
千鶴さんが用意してくれた八海山のボトルから中身をどぼどぼとグラスについだ。
一口飲んで、無理矢理口を開く。
「祐治からはなにも聞いてない」
それしか言えなかった。
< 164 / 206 >

この作品をシェア

pagetop