大海の一滴
勇気が無かった。
それに、さちちゃんのことも好きだった。
だから、ちょっとずるいけどフジさんが来る日にした。
さちちゃんが青いワンピースを着て『もう一人の私に』会いに行く日。
自ら留守番を買って出る。
「ありがとう」
さちちゃんはワンピースに袖を通しながら微笑んだ。
チクリ、れいこの胸が痛む。
「れいちゃんは頼りになるね。そうだ、今度一緒に海に行こう。伝説の二枚貝を探しに」
「伝説の二枚貝?」
「そう。たま~になんだけどね、海岸に流れて来るんだって。桜貝に似た綺麗なピンク色をしていて、貝殻がハートの形をしているの。それでね、その二枚貝を半分ずつ持っていると、一生繋がっていられるらしいの」
だから探そうね。と、れいこの両手を握り、留守を宜しくね。と、さちちゃんは笑って出て行った。
タツユキ君が来るかどうかは分からなかった。
連絡先も知らない。苗字だって分からない。
だから、もしタツユキ君がやって来たら運命なのだと思うことにした。
随分待った。
タツユキ君は現れない。
午後になった。
最近、日が沈むのが早い。
(……やっぱり、運命じゃなかったんだ)
れいこは思った。
やっぱりタツユキ君はさちちゃんのもので、私のものにはならないのだ。
~~~ 私の居場所なんて、どこにもないんだ ~~~
その時だった。
「あれ? 今日はれいちゃん一人?」
いつもの爽やかな笑顔で、タツユキ君は現れた。