運命のヒト


失恋しようが、男が失踪しようが、それで夜通し泣き明かそうが。

社会人なんだから、朝が来れば当たり前に出社する。


そういえば学生の頃は、恋人と別れたショックで学校を休んだりもしたっけ。

悲しいラブソングに浸りながら、ベッドの中で涙に暮れるのも、けっこう悪くなかったな。


そんなのできない今のあたしは、せめて仕事に没頭して、悲しみに飲み込まれないよう足を踏ん張るだけだ。



「美園さん、風邪まだ治らないんですかぁ? もう4日目ですよね」

月曜からマスクを着けているあたしに、隣のデスクの青木さんが言った。

< 220 / 415 >

この作品をシェア

pagetop