運命のヒト

なぜ抱きしめたのか、彼は何者なのか、尋ねたかったけどできなかった。

巡回中の警察官がその場を通りかかったからだ。


特に何か注意されたわけではないけど、沢村さんはやましい部分があるからか、そそくさと帰っていった。

そして、彼の方はというと。

一瞬だけあたしを思いつめた表情で見つめたけれど、すぐに目をそらし、おぼつかない足取りで闇に消えるように去って行ってしまった。

結局、何ひとつ事情を説明してくれないまま。



「……やっぱり、いないか」

いくつかベンチを確認してみたけど、彼の姿はない。当然といえば当然だ。
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