運命のヒト

すごく気さくな人だ。

だけど、最愛の人を亡くしてからここまで元気になるには、どれほどの痛みを乗り越えてきたんだろう……。


気の遠くなるような絶望を想像して、あたしは思わず黙りこんでしまった。


「こんな話をして、気を悪くさせちゃったかしら?」

「あっ、いえ」


決して気を悪くしたわけじゃない。
むしろ、あたしは知りたかった。

最愛の人を失った彼女が、こうして今笑っていられる、そのワケを。


オーナーさんはそんなあたしの様子から、何か感じたのかもしれない。

慈悲深い瞳で、じっとあたしを見つめたかと思うと

「今日は雨だからお客さんも来ないだろうし、ちょっとおばさんの昔話でも聞いてもらおっかな」

ニコニコ笑いながらそう言って、あたしとシロに紅茶のおかわりを入れてくれた。



それからオーナーさんは、亡くなった旦那さんのことを話してくれた。

まるで何百年も語り継がれてきた寓話を口にするような、淡々とした口調で。

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