運命のヒト

「いやっ、あの……何ていうかほら、あたしを助けたせいで泊まる所を失ったわけだし、だからっ――」

「抱きしめないよ」


やわらかい声が、あたしの言葉を遮った。

「え?」と驚くあたしに、彼は柔和に微笑む。


「誰でも抱きしめるなんて言ったのは、ウソ」


なぜかあたしは胸がキュッとして、悲しくもないのに、泣きたいときに似た気持ちになった。

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