運命のヒト
あきれつつも、あの笑顔で誘われるとつい気がゆるんでしまい、あたしも自分の胸の高さほどあるフェンスを上った。
ヒールの高いブーツを履いているせいで、なかなかバランスがとりづらい。
まずは右足をフェンスの向こう側に移し、続いて左足も向こう側へ――
と思ったところで、見事に足が滑った。
「ひゃっ」
小さい悲鳴の直後、感じるはずだった落下の衝撃。
だけどそれは、固くも柔らかくもない感触に打ち消された。
シロがとっさに支えてくれたのだ。
「あ……ありがとう……っ」
あたしの足がしっかり地面に着いたのを確認すると、シロはそっと手を離した。
体が触れていたのなんか一瞬なのに、シロの体温があたしに焼きついたみたい。
至近距離でシロを見上げると、瞬間、彼の表情がわずかにたじろいだ。
その様子からあたしは、自分の瞳がひどく潤んでいることに気がついた。