桜、雪、あなた




「ミオちゃん怒ったー」

「怒ってないしー」

「はいはい。つーかさぁ、まじ飲みたくなんねぇ?この景色やばいだろー」

「んー…まぁ…」



…確かに。
写真の話しは軽く流されちゃったけど、

うん。
ヨウスケくんの言っている事は ごもっともだわ。

だって、だって。

そよそよと吹くそよ風
牧草の独特の匂い

シートの上でお昼寝をしている人、
出店から聞こえる大きな笑い声。

空は雲1つない快晴だし
本当にめちゃくちゃのどかで

こりゃー飲みたくもなるわ。



「ねー。てかさぁ、ヨウスケくんー」

「あー?」

「飲んでいいよ?」



あたしは笑顔で言った



「はー?なんで今日の主役差し置いておれひとりで飲むんだよ」



当然の様に遠慮するヨウスケくん



「いやー本当にいいよ?あたし帰り運転して帰るし」



てか、ぶっちゃけそのつもりだったし



「あり得ないだろー」

「いや、本当我慢してるとかじゃないからさっ!
むしろ早起きしてあたしの誕生日をお祝いしてくれただけでもう十分!」

「いやいやいやー」

「いいから飲んでっ?」



あたしが今日主役って言ってくれるなら
主役の絶対命令だよー!

今日はあたしの言う事聞いてよっ ねっ!
飲んでー!

と、
あたしは遠慮するヨウスケくんの言葉を聞かずに、
ここぞとばかりに主役という権限を最大限フルに活用した。



「…まじで?」

「うん!」



だって本当に大満足だし、ヨウスケくんにだって楽しんでもらいたいし!

どうせなら同じだけ楽しみたいじゃん?


「……あー…」

「ね?行ってきなよ!」

「んー、じ、じゃあ…」



そしてついにあたしに押されたヨウスケくんは
ポケットから財布を取り出すと



「悪りぃな、したっけちょっと行ってくるわ」

と、
あたしに一言残して
ヨウスケくんは出店へと歩き始めた。



「いってらっしゃーい!」



そしてその後、その後ろ姿を見送りながらあたしは



「その代わり次写真だからねー!」

と、
わざと聞こえるように大きな声でヨウスケくんの背中に向かって叫びながら
大きな背伸びをして、空を仰いだんだ



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