桜、雪、あなた
その帰り道。
「…やっぱ人間の体は夜酒飲むようにできてんだなー」
あたしがハンドルを握る隣の助手席で
「…昼間から飲むもんじゃねーな。無駄に眠たい…ふぁーあっ」
大きなあくびをひとつ ショボショボした目を擦りながら
体を伸ばしてヨウスケくんが言った
「あははっヨウスケくん無理しなくていいよ?あたし運転しとくから少し眠っときな?」
「…んー………」
「おやすみー」
「んー…」
完全に全身の力が抜けてしまった
(っぽく見えた)
ヨウスケくんは
瞼を閉じて首を傾けまま、
すでに言葉になっていない言葉であたしに一生懸命返事をしてくれた。
だけどその姿が何だか可笑しくって。
あたしは眠りかけているヨウスケくんのために車内に流れるBGMのボリュームを下げた
ーそれからしばらくの沈黙の後、
赤信号にさしかかった時、あたしが助手席に目を向けるとヨウスケくんは
スースーと静かに寝息を立ててぐっすりと眠っていて
「…本当に寝ちゃってる」
その気持ち良さそうな寝顔を見たら
思わず口元が緩んでしまった。
…そんな寝顔を見ていたら
目をつむったままでもわかるはっきりとした顔立ちに、
『そう言えば…』
出会って初めてまじまじとヨウスケくんの顔を見た事に気が付いた。
窪んだ瞼
吊り上がった眉
鼻筋の通った高い鼻
口角の上がった厚い唇
…どこからどう見てもキレイに整った顔、なのに
『…本当にやんちゃそうな顔してるよなぁ』
と、
顔や拳にたくさんある古傷を見て改めてつくづくそう思ってしまった。