桜、雪、あなた
4.『二度目』



「…本当にいいの?」

「いいって!まじ遠慮すんなよー?好きなの頼めよな」

「う、うん。じゃあお言葉に甘えて…えっとね…」



ヨウスケくんがご馳走してくれたお店は
あたしなんかの誕生日をヨウスケくんにお祝いしてもらうにはもったいない位、
本当にとても素敵なお店だった。

(そうだ、この前あたし確かに言ってた場所だ)

(…いっ、言えない…!)

居酒屋の賑やかなイメージとは全く違う、しっとりと落ち着いた雰囲気の店内で

和食をメインにした創作料理が自慢だというおいしいご飯と
、口いっぱいに広がる甘いカクテルが。

ゆっくりと流れて行く時間と共に、遠出の疲れを癒してくれるー。




「「ふーっ…」」

「いやーさっすがに今日は酔い回るの早いなぁ」

「うーっ あたしもすでに頭ポーっとしてるー」

「大丈夫、おれも一緒だから」

「あははっ」

「でもまぁ、こんな日あってもいいよな」

「ねー」

「遠出してうまいメシ食って。こんな疲れなら全然いいよなー」

「ほんとー!……てか、まっじでありがとね?」

「いいえ!どう致しまして…って。あ、そーだ!!」



その時
ふたりで今日の余韻に浸っていると
ヨウスケくんが突然 何かを思い出したかの様に

そうそう忘れてた

と、
椅子の背もたれに掛けていたアウターのポケットから
ごそごそと赤い紙に包装された薄っぺらい四角い何かを取り出した。



「…ん?なぁに、それ?」

「さて、何でしょう」

「えー?わっかんないよー」



あたしはヨウスケくんの手の中にあるその物をじっと見つめながら



「何、それ?」



もう一度聞き返した



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