あなた色に染まりたい
蓮は海水に浸けてる自分の手を見ながら、ボソッと呟くように口を開く。




「昨日、晴希さんとかも言ってたけど、紗羽さんってモテるじゃん?」


「あれ、そんなこと言ってたっけ?」


「競争率が高いって。」


「あぁ……でも、あたしモテないよ。モテてるのは蓮でしょ?この間もコクられたって聞いたよ?」


「俺の話はいいんだって。」


「……」




コクられた後、どうなったのか聞きたかったのに。




「この二年間、付き合ってもいいかなって思える人には、一度も出会えなかったの?」




そう言ったあと、蓮は様子をうかがうように、チラッとこっちを見てから、視線を海へと戻した。




「ないよ。あたしはもう男の人を信じていないから。」




大輝とあんなふうに別れて、“男の人は裏切るものなんだ”と、あたしの脳内に刻み込まれてしまった。




「俺のことも?信じてねぇの?」




そう言った蓮は、今度は体ごと振り向いて、あたしの顔を覗き込んできた。



不安そうに揺れる瞳に、なぜか胸が痛くなる。




「蓮は……友達だから。でももし、あたしが蓮を好きになったら、もしかしたら信じられなくなるかもしれない。」


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