あなた色に染まりたい
大輝とのことがあまりにも辛過ぎたから、新しい恋に踏み出すのが怖かった。


辛い思い出ばかりじゃないはずなのにね。


大輝との時間の中にも、楽しくて幸せを感じた時間はいっぱいあった。




叶わなかったけれど、海で永遠の愛を誓ったときは、間違いなく幸せだった。


初めてキスをした時だって、初めて結ばれた時だって、涙が出るくらい幸せだったのに……


その幸せだった思い出を、忘れてしまっていたなんて――…




大輝との思い出をちゃんと振り返って……


ちゃんと終わりにして……




そして、蓮にあたしの想いを伝えたい。






部屋に戻ると、蓮は横になってテレビを観ていた。




「あれ、食器は?」




夕食を食べた終えたままになっていた食器が、どこにも見当たらなくて、それを蓮に聞いてみる。




「洗っといた。」


「え!?ダメじゃん!あたしやるつもりだったのに。今日は蓮の誕生日なんだよ?ごめんね……」


「はは、そんなこと気にすんなよ。」




笑顔でそう言ってくれる蓮に、凄く安心する。


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