恋の魔法と甘い罠
そしてその音がなかなか鳴りやまない状況に耐えられなくなって、



「戻ってもいいですか?」



和泉さんに訊いてみるけれど、



「食後はいつもここで煙草を吸ってる」



慎也さんが来ることをわかっていて、ここに連れてきたらしい。



「どう、して?」



何でこんなことをするのかわからなくて、震える声を必死におさえながらそう訊いてみるけれど、



「会わなきゃ忘れられると思ってる? 避けていて解決すると思ってる?」



和泉さんの口から出てきた言葉はあたしの心をすべて見透かすようなもので。



「俺はそうすることで余計に心の中に居座ってしまうと思ってる」


「……」


「つーか、居座っちまうんだよ。絶対に叶うことのない想いでも隙あらばそこに入り込めるんじゃねーかって心のどこかで期待して……好きっつう感情はほんとに厄介なんだよ」



そう言って深く息を吐いた和泉さんはあたしに言い聞かせるというより自分の想いを吐き出しているようで。


……もしかして、これって和泉さん自身のことを言っているのかな……


なんて想像してしまった。
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