恋の魔法と甘い罠
なんとなくその姿を見ていたけれど……


あれ?


今『待たせてもらうよ』って言った?


しかも、そこに座っちゃうの?


一瞬自分の思考がストップしたけれど、すぐに我に返って今の状況を理解する。


椅子に腰かけた和泉さんは長い足を組んで、右肘をデスクに乗せて腕枕しながら、流すような視線をこっちに向けている。


さっき10分で終わるって言ったけれど、それは集中してやれば……の話で。


だけど、そんなところに座っていられたら、和泉さんの存在も和泉さんの視線も気になってしまって、集中なんてできるわけがない。


それでも、仕事をしなければと小さく息を吐いてから、視線をパソコン画面に向けた。



「……」



でもやっぱり……


意識は隣に座っている和泉さんに向いてしまって、どきどきと音をたて始めた鼓動の音はどんどん大きくなっていくのに、キーボードや電卓を叩くはずの指が全く動いてくれない。


この状況で仕事をするなんて、あたしには無理だよ。


きっと入力間違いや計算間違いをするに決まっている。


ああ、どうしたらいいんだろう……。
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