恋の魔法と甘い罠
そんなあたしに、和泉さんは不思議そうに口を開く。



「何?わかんねーとこでもあんの?」



あたしの作業が進まないのはわからなくて躓いてしまったからだと思われたらしい。


たかが領収書の金額を打ち込んで計算するだけの作業でこんなに長い時間、手が止まってしまう……なんてことはあるはずがない。


もしかしたら和泉さんは、あたしの仕事の内容がそういうものだと知らないから、こんな風に訊いてきたのかもしれない。



「ち、ちがいます!」



あたしが若干ムキになりながらそう言うと、和泉さんはさらに不思議そうに首を傾げた。



「全然手が動いてねーけど……あっ、もしかして……頭ん中で計算してんの?」


「えっ」



頭の中で計算?


それって……暗算してるってこと?


いやいやいやいや……


もし暗算が得意だったとしても、ミスの許されない仕事で電卓やソフトを使わずに計算するなんてあり得ない。
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