恋の魔法と甘い罠
「……和泉さんが……そんなところに……いる、から」


「は?」



手が動かない理由を口にしたけれど、和泉さんはその言葉の意味がわからないのか、そう言って眉を寄せる。



「そんなところから……じっと見られていたら、集中なんて、できるわけがないです」



ぼそぼそと呟くようにそう言うと、和泉さんは納得したように「ああ」と声を漏らした。そして――



「じゃあ、見ないから」


「えっ」


「そっちは見ないから、残りやっちゃって」



和泉さんはそう言って、ポケットからスマホを取り出してそれを弄り始めた。


その姿にほっとすると同時に、やっぱり一緒に帰るつもりなんだ……と、この先のことを考えると心臓がどきどきと激しく動き始める。


だけど今は、とりあえず仕事は終わらせなければと、その音を鎮めるように大きく深呼吸をしてからパソコンに視線を移して、キーボードを叩き始めた。
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