恋の魔法と甘い罠
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「終わったぁー」



そう言いながら、両手を目一杯上にあげて「うーん」と伸びをする。


ずっと同じ姿勢だったせいか、固まってしまった背中の筋が伸びてめちゃくちゃ気持ちがいい。


そのまま首を左右交互にゆっくりと倒しながら、小さく息を吐いたとき、



「ジャスト」



という声が隣から響いてきた。



「えっ」



ゆっくりとその方向へ視線を向けると、和泉さんが瞳をやさしく細めながら



「ジャスト10分だった」



と言って時計を指差した。


そういえば、あたしが10分くらいで終わるって言ったんだ。



「もう帰れる?」



パソコン画面をちらっと見たあと、あたしの方に視線を戻してそう訊いてきた和泉さん。


確かに仕事は終わったし、もう帰ることができるんだけれど……


このあと二人きりになるって思うと、途端に心臓がどきどきと暴れ始めて、和泉さんの顔を見れなくなってしまった。
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