【完】短編集~幼馴染み~
「……んっ」
目が覚めたあたし。
意識が朦朧(モウロウ)とする中、辺りを見渡した。
…どこかの廃棄された工場?
あたしは手首と足首を縄で縛られていて、身動きがとれなかった。
「あ、目ぇ覚めたんだ」
「あなたたちは、一体……」
「俺ら、ずっと前にアイツにヒドイ目にあったんだよね」
……アイツ?
「アイツって…?」
「え?古暮史也だよ」
史くん、が?
「史くんは、理由もなく人を殴らないよ」
「ふぅん?」
「それより、どうしてあたしを…?」
「君をおとりにして、アイツを呼び出すためだよ」
「君は、アイツの彼女だしね?」
「あたし、彼女じゃないし…、史くんはきっと、来ないよ。あたし、うざがられてるもん…」
そう、あたしは…嫌われてるの。
そう思うと、涙が出てきた。
「あ~あ、可哀想に。俺が慰めてあげるよ」
そう言って、頭を押さえてキスをしようとする男。
「…やっ…」
助けて、史くん――……!!
ギュッと目を閉じた時、扉が開いた。

「眞流ッッ!!」
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